ジョーイ・ドーシックの内なるニュー・ソウル | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ジョーイ・ドーシックの内なるニュー・ソウル

ジョーイ・ドーシックの内なるニュー・ソウル

スタイリッシュでソウルフル
話題のシンガーソングライターが初登場

 昨年リリースしたファースト・ソロ・アルバム『インサイド・ヴォイス』が音楽好きの間で大きな話題となった、シンガーソングライターのジョーイ・ドーシック。 聴けば誰もが笑顔になる彼の音世界を、ぜひ間近で体験しよう。

text = Kenichi Aono

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 新進気鋭のアーティストをフィーチャーする、ブルーノート東京のプログラム「The EXP Series」に、ロサンゼルス出身でシンガーソングライター、鍵盤をはじめとするマルチ楽器奏者のジョーイ・ドーシックが登場する。2015年、モッキーの日本公演のメンバーとして来日し、その際に単独公演も実施。以後、2016年にEP『Game Winner』を自主レーベルから発表(のちにワールドワイドで再リリース)、2018年9月にはファースト・ソロ・アルバム『インサイド・ヴォイス』をリリースと、自己名義での活動が顕著になってきたタイミングでの実に嬉しいアナウンスである。

 ジョーイ・ドーシックの作品から立ち上ってくるムードは、一言で表せば1970年代のアメリカのソウル・ミュージックだろうか。マーヴィン・ゲイ、ダニー・ハサウェイ、カーティス・メイフィールド、スティーヴィー・ワンダーらの、いわゆる「ニュー・ソウル」と称される、ジャズの響きなどを取り入れた洗練されたソウル・ミュージック。あるいはそのニュー・ソウルとも通底するキャロル・キングのような優れたシンガーソングライターからの影響も感じられるはずだ。とはいえ、それはあくまでもムードの話。ジョーイの音楽は、そうした先達の優れた音楽を吸収しながらも、オリジナリティに富んでいるのだ。

 では、どんなところにオリジナリティを感じるかといえば、まずその歌声が挙げられよう。芯がありつつも透明感と風通しのよさが際立つ彼のボーカルは、ずっと聴いていても耳に心地よい。それに加えて、自然と頬が緩むメロディ、そこに絶妙な味わいを添えるコード展開がシンプルな構造の曲に見事な彩りを与えている。今回の公演はジョーイのほか、ドラム、ベース、ギターというアンサンブルなので、前述のサウンド・アプローチがよりはっきりと伝わるのではないだろうか。

 Xレイテッドな歌詞やラップ、トレンド追随型の画一的なサウンドが目につくアメリカの音楽シーンにあって、温故知新的な「アメリカ音楽の良心」とでも呼びたくなる作品を発表しているジョーイ。その健康ぶりは、決してうわべだけのものではない。「ATWOOD MAGAZINE」のインタビューによれば、彼はトランプ政権を憂い、現政権下で苦しむ人たちのことを思っている。その思いを「僕」の視点で音楽として紡いで、聴く人に笑顔をもたらすのだ。こうした姿勢は、実は'70年代のニュー・ソウルのそれとも響きあっていると信じてやまない。

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『インサイド・ヴォイス』

(Secretly Canadian)



青野 賢一 (あおの・けんいち)
ビームス創造研究所クリエイティブディレクター、 BEAMS RECORDSディレクター。文筆家として『ミセス』(文化出版局)、『CREA』(文藝春秋)などに連載を持つ。DJのキャリアは今年で32年。

アムステルダムで見たライヴのこと

 ジョーイ・ドーシックのソロ・パフォーマンスを幸運にも見ることができたのは去年(2018年)の11月、オランダのアムステルダムに滞在していたときのこと。夜になにかおもしろそうなライヴやイベントはやってないかと探していたときに、「Joey Dosik (Vulfpeck)」の名前を見つけた。場所は市内の古い劇場を改装したライヴスペース、Paradiso。〈Super-Sonic Jazz Festival 2018〉の一環として行われる一夜で、ジョーイ以外にもドリアン・コンセプトやアルファ・ミスト、ユセフ・デイズといった顔ぶれが出演するという。

 建物の中に2会場あるうち、ジョーイが出演するのは2階にある小さなホールの一番手。小さいといっても500人ほどは入る規模で、Vulfpeckとの共演やソロ・アルバム『Inside Voice』がリリースされて注目を集めているとはいえ、この規模が埋まるのかと一瞬心配したが、蓋を開けてみたらまったく杞憂だった。明らかに彼が目当てで来たとわかる若いお客さんが増えてきて、あっという間に僕は壁際に追いやられた。オープニングの「Inside Voice」のイントロが鳴った瞬間に女性たちのうっとりしたような声が上がって、熱い気持ちが目に見えるようだった。

 奇しくもこの日がヨーロッパ・ツアーの最終日にあたるそうで、彼の歌声もキーボードもバンド・メンバーと醸し出すグルーヴも最高に心地よい。ソロ・アルバムやVulfpeckとの共演曲である「Running Away」などを交えつつの45分はあっという間に過ぎてゆく。本編ラストに演奏されたのは、なんとマーヴィン・ゲイ「Save The Children」~「Mercy, Mercy Me (The Echology)」メドレー。じつはこのツアーではアルバム『What's Going On』のA面全曲メドレーが毎晩演奏されていて、今夜はそのダイジェストだったのだ。

 終演後にお客さんのサインに応じたジョーイに「日本から来た」と話しかけたら、「僕がMOCKYとのジャパン・ツアーで教わって、今でも覚えてる唯一の日本語が"MATA KURUNE(また来るね)"なんだよ」と笑ってくれた。その予言みたいな言葉が早速現実になってうれしい。『What's Going On』のA面全曲メドレー、絶対見たいから、ぜひ今回の日本公演でお願いします!

text = 松永良平(リズム&ペンシル)
twitter : https://twitter.com/emuaarubeeque
Blog : http://d.hatena.ne.jp/mrbq
note : https://note.mu/emuaarubeeque



公演に向け、期待高まるコメントが到着!

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Joey Dosikは個人的に今もっとも注目している男性シンガーの1人です。どこか切なくそれでいて優しさのある彼の歌声は、声そのものだけで聴き手の琴線に触れる魅力があると思います。それに、特にアップテンポな曲で盛り上げていくタイプのシンガーではないのに、ピアノ一台と歌だけで聴衆を魅了し盛り上げる才能にも感服します(駅かどこかに設置されているピアノで弾き語る動画がYouTubeにあるので是非!)。そんな彼のバンドセットという事で個人的にも今回の公演は非常に楽しみです!!

荒田 洸(WONK)
http://www.wonk.tokyo/
https://twitter.com/arata_pxr

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カルロス・ニーニョ率いるビルド・アン・アークの多様なメンバーを調べている際に、ジョーイ・ドーシックを知った。その時の彼はアルト・サックス奏者だった。モッキーの来日公演に同行した時にはローズ・ピアノを弾いていた。シンガーソングライターとしてソロ・デビューを飾った彼の驚くほどソウルフルな歌には、ロサンゼルスの豊かな音楽シーンが背景にある。ライヴでその真髄に触れられることが本当に楽しみだ。

原 雅明 (rings)
https://www.ringstokyo.com
https://twitter.com/masaakihara

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レミー・シャンドやジャロッド・ローソンなどの系譜に連なるソウル・スタイリストぶりに魅せられたのが約3年前。デリケートな歌い口と丁寧に紡がれたサウンドで夢見心地にさせてくれるジョーイ・ドーシックの音楽からは"誠実"という言葉が浮かんできます。常に進化/変化しているR&Bを聴き続けている自分にとっては、たまに戻りたくなる故郷のような温かで安心感のある音楽。クァドロンのココ・Oとのデュエットも含めてアルバムで滲ませていたマーヴィン・ゲイへの憧れは、今回のステージにも反映されることでしょう。ブルーノート東京の雰囲気も彼をひときわ輝かせてくれると思います。

林 剛(音楽ジャーナリスト)

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LAに限らず、世界規模でブラック・ミュージックの新たな在り方を再構築、再検証する動きが盛んな中、ジョーイ・ドーシックはそうした時流に流されることなくソウル・ミュージックの王道を継承しようとする数少ない若手音楽家の一人だ。とはいえ、ブルーアイド・ソウルとしての茶目っ気、ウィットもたっぷりの歌声からは、あくまで多様なポップ・ミュージックの広がりの一端を感じ取ることもできるだろう。本気だけど洒落ている、真摯だけど粋、そんなジョーイの存在を全身で堪能したい。

岡村詩野 (音楽評論家)
https://twitter.com/shino_okamura
http://turntokyo.com/

The EXP Series #29
JOEY DOSIK
2019 7.31 wed., 8.1 thu.

[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/joey-dosik/

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