あのヴァレリー・シンプソンがデイヴ・コーズと共演! | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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あのヴァレリー・シンプソンがデイヴ・コーズと共演!

あのヴァレリー・シンプソンがデイヴ・コーズと共演!

ソウル・レジェンドを迎えた
話題のコラボレーションが日本上陸!

 スムース・ジャズ界の人気サックス奏者デイヴ・コーズが、アシュフォード&シンプソンとしてソウルの世界を潤してきたヴァレリー・シンプソンを迎えて約2年ぶりに来日。モータウンの作曲家でもあったレジェンドとのコラボには公演前から称賛の声が鳴り止まない。

text = Tsuyoshi Hayashi

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 映画『ラ・ラ・ランド』でミアが「ケニー・GのようなエレベーターのBGMが私にとってのジャズ。リラックスする音楽なの」と言って、ジャズ・ピアニ ストのセブが「それはジャズと違う」と熱くなる場面がある。雰囲気モノのスムース・ジャズとジャズを一緒にするな、と。よく聞く話だ。が、本国、特にブラック・コミュニティにおけるスムース・ジャズの需要は思いのほか高い。それは確かにチル(リラックス)するための音楽であり、時に媚薬のような効果も発揮する。多くのスムース・ジャズ系アクトが自らの楽曲にR&Bシンガーを招き、R&Bの名曲をカヴァーしたアルバムをメジャーから出し続けていることが人気の証拠だ。ジャズではなくインストのR&Bだと思えばセブのように熱くならずに済む。

 デイヴ・コーズがリック・ブラウンらのホーン仲間とデイヴ・コーズ&フレンズ名義でリリースした最新アルバム『Summer Horns II from A to Z』(2018年)も、マイケル・ジャクソンやメイズ、ナタリー・コールなどの名曲を取り上げ、ゲストにケニー・ラティモアやジョナサン・バトラーらを迎えていた。「From A To Z」ではジャズ・スタンダード「A列車で行こう」と、ジェイ・Zがサンプリングしたメナハン・ストリート・バンドの「Make The Road By Walking」を繋ぎ、ヒップホップ(のリスナー)も視野に入れている。

 派手なアクションを交えてサックスを吹く、躍動感のあるステージングでもお馴染みのデイヴ。第55回グラミー賞にノミネートされた初のライヴ盤がブルーノート東京での2011年のショウを収めたものであったことも含めて本クラブと縁が深い彼は、過去のステージでピーボ・ブライソンやハビエル・コロンと共演していたが、約2年ぶりとなる今回の公演にはヴァレリー・シンプソンを招聘。モータウンのソングライター/プロデューサーとして名を上げ、夫婦デュオとしても多くのヒットを放ったアシュフォード&シンプソンのヴァレリーが、2009年にデュオとしてブルーノート東京で初来日公演を行って以来、約10年ぶりにやってくるのだ。

 2011年には夫のニコラス・アシュフォードが他界したが、以降もソロ・アルバムの発表、若手とのコラボ、昨年はブロードウェイ・デビューを飾るなど、精力的に活動を続けるヴァレリー。〈デイヴ・コーズ & フレンズ〉のコンサートにも度々出演し、ホリデー・シーズンにはアシュフォード&シンプソンのヒッ ト「Solid」も歌っていた。そんなヴァレリーを従えての来日公演は、サックスとヴォーカルで情熱的なデュエットを披露するふたりの姿を想像するだけで興奮してしまうし、今年創立60周年を迎えたモータウン関連の曲も演ってくれるのではないか?と期待も高まる。演奏では故アル・ジャロウのバンド で活躍していたベースのクリス・ウォーカーらがサポート。間違いなく上質なステージが約束されている。


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左)DAVE KOZ featuring JAVIER COLON 2017 9.14 - 9.17 Photo by Yuka Yamaji
右)ASHFORD & SIMPSON 2009 11.19 - 11.22 Photo by Great The Kabukicho


数々の名曲を書き、夫婦デュオとしても活躍した
ヴァレリー・シンプソンの華麗なキャリア

 過日の第61回グラミー賞にてダイアナ・ロスが「Reach And Touch (Somebody's Hand)」(70年)を歌った際、同曲の作者であるアシュフォード&シンプソンのヴァレリー・シンプソンが客席前方で一緒にメロディを口ずさんでいたことは記憶に新しい。ダイアナ・ロスを陰で支えた彼女もまたソウル・ミュージックのスターである。

 NYブロンクス出身(1946年生まれ)のヴァレリー・シンプソンは、ハーレムの教会で出会ったニコラス・アシュフォードとソングライターおよびデュオ(当時はヴァレリー&ニック名義)として活動を開始。ジョー・アームステッドと共作した「Let's Go Get Stoned」が66年にレイ・チャールズのヴァージョンでヒットすると、それが注目を集めるなどしてモータウンの専属ライターとなる。主にヴァレリーが作曲、ニコラスが作詞という体制で、モータウンではマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのデュオに多くの楽曲を提供。後にダイアナ・ロス版で大ヒットする「Ain't No Mountain High Enough」をはじめ、「Your Precious Love」「You're All I Need To Get By」「Ain't Nothing Like The Real Thing」など、60年代後半に放たれたこれらの洗練されたメロディはモータウンに新しい風を吹き込んだ。

▶︎マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「Ain't No Mountain High Enough」

▶︎アシュフォード&シンプソン「Ain't No Mountain High Enough」

 70年代前半には自身もモータウンからソロ・デビューし、「Silly Wasn't I」(72年)がヒット。ピアノ弾きのシンガー/ソングライターとしての佇まいは、今振り返るとアリシア・キーズの先駆けといった印象も受ける。その後ニコラスと結婚した彼女は夫婦デュオのアシュフォード&シンプソンとしてワーナーと契約し、ディスコ・ムーヴメントとも連動しながら「It Seems To Hang On」(78年)や「Found A Cure」(79年)などのヒットを連発。並行してソングライター/プロデューサーとしての活動も続け、モータウンのヴォーカル・グループ=ダイナミック・スペリオーズを手掛けたほか、チャカ・カーンに「I'm Every Woman」(78年)、ダイアナ・ロスに「The Boss」(79年)などを提供した。クインシー・ジョーンズ「Stuff Like That」(78年)への参加も知られているだろう。都会的で昂揚感のある彼らの楽曲は、ラリー・レヴァンがDJを務めるNYの名門クラブ〈パラダイス・ガラージ〉でも頻繁にプレイされた。

▶︎チャカ・カーン「I'm Every Woman」

▶︎クインシー・ジョーンズ「Stuff Like That」

 82年からしばらくはキャピトルに所属し、84年には「Solid」がデュオとして初のR&Bチャート1位を獲得。96年には自主レーベルのホップサック&シルクから詩人マヤ・アンジェロウとの共演盤『Been Found』を出しているが、この頃、NYマンハッタン西72丁目にオープンしたのが〈Sugar Bar〉というレストラン・バーだ。ここでは夫妻が主催するオープンマイクも行われ、2011年にニコラスが他界して以降もヴァレリーがホストとなって新人やインディ・アーティストのサポートを続けている。

▶︎〈Sugar Bar〉でヴァレリーが存命時のニコラスの誕生日を祝う

 40年ぶりのソロ作『Dinosaurs Are Coming Back Again』を発表したのが2012年。近年は、キンドレッド・ザ・ファミリー・ソウルの「A Couple Friends」(2014年)でピアノ・ソロを披露し、コリーヌ・ベイリー・レイの「Do You Ever Think Of Me?」(2016年)では共作するなど、後進アーティストとの交流も目立つ。昨年はミュージカル『Chicago』でブロードウェイ・デビューを果たし、今年はモータウン60周年記念関連のイヴェントに出演。ここにきて再び露出が増えているヴァレリー・シンプソンは今、何度目かの黄金期を迎えているようだ。


林 剛 (はやし・つよし)
R&B /ソウルをメインとする音楽ジャーナリスト。CD の解説を含め、様々なメディアに寄稿。今年前半はモータウン60周年のコンピレーションを制作。現行 R&B やニューオーリンズ新世代アクトのチェックに余念がない毎日。

DAVE KOZ featuring VALERIE SIMPSON
2019 5.3 fri., 5.4 sat., 5.5 sun., 5.6 mon.
5.3 fri., 5.4 sat., 5.6 mon.
 [1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm
5.5 sun. ★1stショウではJAZZ for CHILDRENを開催
 [1st]Open2:30pm Start3:30pm [2nd]Open6:00pm Start7:00pm

公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/dave-koz/

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